ホホエマシイ旅人

311

お茶の水の出版社の10階にある料理スタジオで物撮りしていた。

揺れ始めた時は、まずは三脚とカメラを押さえて揺れが収まるのを待つつもりだった。

そこにいたのは、編集さん、スタイリストさん、私の三人。

だんだん横揺れ幅が大きくなり、自分の背丈くらいある3つのワイヤーラックが壁から前進し始め、ラックに収納されている撮影用の食器は大きな音を立てて次々と落下し、粉々の陶器がこちらに刺すように飛んで来た。

編集さんはしゃがみ込み、スタイルスとさんはシンクの横にうずくまり、私はストロボがスタンドごと落下し始めたので、カメラを抱えてスタジオの中央に這って行った。

とにかく揺れが長かった。

大丈夫? とお互いに声をかけて、揺れが収まったと同時に立ち上がった。
とにかく食器が割れる音が凄かった。
見渡せば、割れた陶器の破片が床を多い、ストロボやバウンス版あちこちに飛んで行っていた。

窓を開けると、青空の下、皇居や大手町、いつもと変わらない景色。
ただ、避雷針と工事のクレーンがヤジロベイのように揺れていた。

館内の放送で、避難開始する。

カメラ一つと携帯を持って出ようとしたら、どこからか水がドバドバとスタジオに流れて来た。
データを守らねばと慌ててノートパソコンとカメラバックを抱え、階段へと急いだ。

10階から1階まで降りた時の記憶がほとんどない。
たった3階くらいから降りたような感覚だ。

駐車場に出ると、すでに出版社の全社員が避難していた。
知っている顔がそこには沢山いて、みな、手を取り合って無事を喜んだ。
膝から少量の血が出ていた。
破片が飛んで来て切ったのだろう。
それを見て、よくこんなもので済んだな。とやっと落ち着いて考えられるようになった。

帰宅を決意する。
見渡したところ、ビルが倒壊するほどの被害もなく、お茶の水の道路は、いつも通り、配達のトラックやタクシーが走っていた。
車で来ていたので、同じ方向の人を募った。
仲良し編集者のMちゃんと初めましてのNちゃん。
「きっと夜中か明け方になると思うけど」
女三人、隅田川、荒川、江戸川を越えた40km帰宅に出発。

NHKラジオでは各所の被災の様子を伝えている。
だんだんと事の大きさに身に染みて感じてくた。
靖国通りは、徒歩で家路を目指すお勤め人の方々が、黙々と前を見て静かに歩いていた。
両国橋までは順調に車が動いた。
錦糸町辺りから、10m進むのに10分と言った感じ。
歩いている人の方が早い。
JRの駅周辺には多くの人が、バスやタクシーに列を乱す事無く並んでいた。
パニックという言葉は無縁。とにかく静かに並んでいた。
有事であるのに、町で警察官を見かけなかった。
いつも以上に荒い運転やクラクションを鳴らす車は皆無であったし、
こんな状況でも人々は信号を守り、コンビニは通常営業して避難民にトイレを貸していた。
町には、警察が笛を吹くような事は何一つ無かった。
この節度ある行動を、「これが日本人」と世界に知ってもらいたいと思った。

次の荒川を越えるまでに5時間かかった。
途中、DVDレンタル屋さんでトイレを借りた。
「こういうときはお互い様ですから、どうぞ」
と、従業員用のお手洗いに通してくれた。とっても温かい。感謝。

ラジオから流れる報道は、想像しがたいことばかり。
Nさんは連絡が取れない友達を思って、今にもこぼれそうな涙。
気分転換にiPodをつないで音楽を聞く事にする。

私のiPodには、元気の源、K-POP!!!

もちろん、ブアガルから始まり、SHINEE、少女時代!

大声で歌う事にする。

「やっぱ、ブアガルはサイコーだ!」

まったく車は動かないので、体操もかねて、こんどは、

少女時代のOh!を振り付きでノリノリ歌って見た!

これが、ほんとに幸せだった。
辺りはすっかり夜。
小さな車の中で女三人、腹から笑う。

歌は逆境をもひっくりかえす、とんでもないパワー!

そのまま3時間ほど、絶叫リサイタル。

江戸川まで300mというところで2時間動かず。
コンビニでトイレを借り、カップヌードルを食べる。
冷えて来た夜、あったかい汁物、しあわせ。

じわりじわりと進み、江戸川を渡ると、そこに現れたサインボードは、

ようこそ、千葉県

午前4時。
12時間かけて千葉県入り。
女三人、拍手、万歳、大騒ぎ!

千葉に入ればこちらのもの。
抜け道ですいすいとあっさり西船橋まで進軍。

Mちゃんを送り、Nちゃんを送り、

5時半。帰宅。

家のドアを開けたらどんな光景が広がっているのだろう。
食器棚は倒れているか?
写真のガラス製額は割れてしまっているか。

おそるおそる中へ入ると、

異常なし。

インコのチバちゃんも元気。

強いて言えば、冷蔵庫の上の調味料が下に落ちていたのと、CDが2枚飛び出ていただけだった。
1階は揺れが少ないのか?

女三人、どれだけ心強かったか!
ありがとう!
私は、しぶとく生きて行く。

岩手のおばあちゃん、孫は元気よ!

おばあちゃんも頑張って!
[PR]



by akaring-sun | 2011-03-12 12:03 | 何となく

職業・写真を撮る人。  余った時間日本にいない人。
by akaring-sun
プロフィールを見る
画像一覧
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30

世界の呼ばれるスポット

1、コスタリカの森
2、サハラ砂漠
3、中禅寺湖
4、石垣島あかいし
5、サパ(VEN)
6、アントワープ(BER)
7、ジェルバ島(TUN)
8、ナザレ(POR)
9、メテオラ(GRE)
10 千葉・鵜原守屋海岸

ブログパーツ

ファン

ブログジャンル

画像一覧